週末デート |
「たまには待ち合わせしてデートしよう?」 いつも迎えに来る臨也に悪いと思っていたので、帝人は特に異論はなかった。いいですよと二つ返事で了承すると、臨也が嬉しそうに笑う。それを見て頬が熱くなったのを感じ、帝人は慌ててパソコンに顔を戻した。イケメンというのはおおよそ特するようにできているのだ。 帝人は割と面食いだ。臨也の顔を気に入っている。 顔が好きで付き合っているのかもしれないと時々自分でも思う。普通なら顔じゃなくて性格だと言い訳をする所だが、その性格が破綻しているのだから、やっぱり付き合う理由は顔かもしれない。 しかし、実際付き合ってみると臨也は意外とマメだった。 朝夜は必ずメールをして来るし、週末はどっかへ連れてってくれる。先程話が出たデートだって、いつも彼が迎えにくるのだ。 しかし、彼は『折原臨也』であるから、ただの気まぐれである可能性は大だ。帝人も今までそう思って疑っていなかったが、一度、付き合った人間には割と優しくするんですねと漏らした時に、臨也は笑顔なのに怒って見えるという器用な真似をしてみせた。 『俺が付き合ったからって誰にでも君にしてるみたいに尽くす訳ないだろ。君は敏いくせに中々俺という存在を理解してくれないね。君だからだよ?わかってる?誰にでもと言ったけれど、今みたいにとことん甘やかしてるのは君だけだからね?そこのところちゃんとわかってよね。ああ、恩着せがましい言い方になったけど、嫌々やってる訳じゃないんだよ。君を見てるとしたくなるんだよ。君は凄いね。俺をこんな気持ちにさせて』 ぐじぐじねちねちと恥ずかしい事を道ばたで話し始めた時は、ひっぱたいて逃げてやろうと思った。しかし、それを察したらしい臨也が帝人の手を掴んでそれを阻んでいた。端から見ればただ手をつないでいるようにしか見えなかっただろうと、後から気づいて絶望した。 しかも、帰宅後、『俺の愛が足りなかったみたいだからたっぷり注いであげる』と下ネタを言われて発言通りいつも以上の無理を強いられた。どことなく乱暴だったから、やっぱり彼は怒っていたのだろう。 あ、意外と愛されてるのかも?と気がついたのは、臨也宅から帰宅して二日程立ってからだというから、臨也もなかなか報われていない。 そんなこんなで、なんだかんだ上手くやってる臨也と帝人は、前述のように週末デートが習慣となっていた。 「何処で待ち合わせですか?」 「んー、上野」 「上野?」 意外な待ち合わせ場所に、帝人は目を瞬いた。 「何処行くんですか?」 「内緒」 まるで悪戯でも企んでいる様な笑顔に、帝人は訝し気な視線を向けたが、彼は答える気はなさそうだ。小さくため息を吐いて、「あんまり無茶な所は止めて下さいよ」と釘を刺した。 そう言いながらも、僅かに口端が上がっているのを、帝人は嫌々ながらも自覚していた。 今の彼のくれる非日常は嫌いじゃない。 週末に備えて、さっさとバイトを片付けてしまおうと、帝人は再びパソコンに集中したのだった。 [続く] ********************************************************** 後編に続きます。2010/12/29 ブラウザバックでお願いします。 |